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Orly lumbreras vinador

by orlando lumbreras, navalmoral

待ち合わせ場所に現れたものすごいひげのオルリさんを見て、ああ、まただ、と思った。両腕にはど派手なタトゥー。どうしてぼくの出会うワイン メイカーはいつもこんなムサい男たちばかりなんだろう。もう少しロマンチックな出会いがあったっていいはずだ。オルリさんがぶつぶつとなにか喋っている。スペイン語しか話さない彼とのコミュニケーションは困難だ。どうやら、車に乗れ。と言っているらしい。おとなしく彼の車に乗り込み、どこかで聞いたことのある古い音楽を聴きながら山道をぐわんぐわんと走った。乱暴な運転だった。これなんて曲だっけ。などと思いながら窓の外をみていると、急に視界が開けた。山頂だった。


広大なグレドス山脈一帯に展開されるヴィンヤード、それは今まで見たどんなぶどう畑とも違っていた。むき出しの花崗岩、古いゴブレの小さなぶどう樹が至る所に点在している。標高1050Mから地上を見下ろした。この世の終わりのような風景だ。強い日差しに汗がにじんだかと思うと、 急に突風のような冷たい風が吹いた。胸が鳴った。もうワインをのまなくたって分かる。オルリさんが一本のぶどう樹をみつめながらなにか話をしていた。大事な秘密を打ち明けるようなそぶりだったけれど、引き続きスペイン語がわからなかったので、仕方なくiphoneのグーグルトランスレー ションアプリを起動して大声で喋ってもらった。彼は“この樹はオレの母親より年上だ”と語っていたのだった。そうなんだ、と返事をするとオルリさんは満足そうな顔をして、畑の奥へたったか歩いていった。なんかこのオヤジ好きだ、とおもった。


音楽系のクリエイター、そしてマドリドの有名なラジオDJとして活躍していたオルリさん。ある番組でワインを題材にしたことからどっぷりワインにはまってしまった。もともとのライフワークであった音楽と通ずるなにかを感じ取ったのかもしれない。ソムリエスクールで世界中のワインを、醸造学校で一からワイン造りを学び、2012年にアヴィリャの小さな集落にセラーを借りて、所有者のいない小さな畑から初めてのワインを造った。40歳。遅いスタートだ。大き な音でロック音楽をかけながら1人ワインを仕込む彼を、村の老人たちは奇妙な目でみた。もちろんオルリさんはそんなこと気にしなかった。


グレドス山脈地帯、高い標高から生まれるガルナチァはスペインで最も美しいワインと評される。高名な造り手も多く、既に産地のブランディングは完成している様に思える。他方このエリアはその複雑な地形から、様々なテロワールの集合地帯ともいえて、実際この地のワインを並べ比較するとそのバラエティ豊かな味わいに驚く。我々はなんでもすぐカテゴリ分けしたがるけれど、森を見て、と昔の人が言ったように、主語が大きくなるほど、物事の細部はぼやけてしまう。面倒でも一つ一つ、時間をかけて向き合っていくしかない。オルリさんのワインはおそらくそのなかでも、ひと際異質な存在だと思う。ナチュラルなワインメイキングであることも影響しているけれど、それ以上になんというか、すべてのワインからはっきり“オルリさんのワイン”の味がするのだ。こういうのって、言葉ではうまく説明できない。つくづく音楽や、ワインの偉大さを想う。帰り際、車の中 で流れていたのはディープ・パープルというバンドなのだとオルリさんが教えてくれた。曲名は忘れてしまった。