top of page

Vinyes Singulars

by ignasi segui, penedes

挑戦的なワインメイキングを行う若手醸造家が台頭するぺネデス。近年はぺティアン・ナチュールに特化した造り手が目立ってきた。もともとが高品質なカヴァの銘醸地なので不思議もない。ユニークな味わいの地場品種チァレロはその高い酸度と鮮烈な芳香性、まさにスパークリングワインの為に存在しているようなぶどうで、その個性を活かしたワインはフランスのナチュラルワイン界隈でも評価が高い。

 

ヴィニェスシングラスを取り仕切るイグナシ、40歳になったばかりの彼もまさに“とんがった”ぺネデス新世代のひとりで、その強烈なーートフォリオははやくもバルセロナやパリ、ロンドンなどで活躍する感度の高いソムリエたちの間で話題になっている。個性の異なる3種のペットナット、果皮浸漬や栗樽熟成による瑞々しいアンバーワイン。全体的にハイトーンで、クリーンな味わい。ナチュラルワインにありがちな欠陥は見受けられない。フィロキセラ到達時に根絶やしにされたペネデスのぶどう畑、これは同時に大勢の失業者を生み出す結果となった。そこに救いの手を出したのがトーレスやコドルニュなどの大手ワイナリーだ。かれらは当時の流行であり、また収量の多い外来品種を植えぶどう栽培家たちの仕事(もちろん自分たちの仕事も)を守った。ペネデスワインにカベルネやシャルドネがいまも多くみられるのはこのためだ。スペインワイン=大量生産、というイメージ。それは事実だ。あるいは、事実であった。100年を超える台木をもつ外来種の株が植わるこの地の景観こそがまさにスペインの歴史なのではないかとおもう。そして今子孫たちがその台木の上に、ペネデス古来の品種を植え直している。チャレロやスモイ、ガルナッチァのことだ。流行りの回帰思想だとか、アンチ外来種だとか、そんな話じゃない。イグナシの家族は1600年代からこの地でぶどう栽培を行ってきた。ぼくらが期待するモダン・スパニッシュワイン像 、結果的にそれが期待通りのものであったとしても、その辺りを理解せず彼らのスタイルを“現代風だ”などと持ち上げるのは、いささか思い上がりのような気がしている。これはイグナシと出会う前までの、ぼく自身への戒めだ。

 

地中海性の温暖な気候の恩恵を受けつつもドライなテロワールで、収穫は早い。9月も頭になれば赤白ともに充分な成熟を迎えていて、気温の不安定な10月を待つことなくクリーンで、オーガニックな収穫を毎年得ている。ワインメイキングにおいては一切の亜硫酸を使用しないイグナシだが、16年のスティルワインで一部瓶詰めの際、はじめて少量の亜硫酸を使用してみた。味わいにより鋭角さが出るらしいよ... と友人のワインメーカーから聞いてそれはすごい、と試してみたのだそうだ。おかしな話だが本人は大真面目で、色がきれいになった!香りのヌケがよくなった!と結果には満足しているという。でも来年はどうするかわからない。

 

イグナシのお嬢さんのマールちゃん (熊のようなイグナシが父親とはにわかに信じがたい) が描くアートラベルワインは世界中で大好評。1000Racesなどの “いたずらがき” シリーズに加え、新商品のスモイ・ロゼでは “かたつむり” を描いた。美術家のお母さん譲り、才能が爆発してる。

bottom of page